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全国大学院生協議会

全国大学院生協議会(全院協)のHPです。全院協は、各大学の院生協議会個別の取り組みでは解決できないような問題を解決するために、全国の院生協議会・院生自治会と多くの大学院生の皆さんと情報交換・経験交流したり、実際に運動していく組織です。

2015/11/01

(html版)2015年度大学院生の生活・研究実態に関するアンケート調査報告書概要版

html版の、2015年度大学院生の生活・研究実態に関するアンケート調査報告書概要版を掲載します。

はじめに

 全国大学院生協議会(以下、全院協)は、大学院生のアルバイト・奨学金といった実態を把握するために、毎年「2015年大学院生の研究・生活実態に関するアンケート」を実施しています。今年は12回目にあたり、2015年6月15日~9月15日に実施しました。ご協力していただいた皆さまに、この場を借りてお礼申し上げます。
 本調査ではこれまで、アルバイトによる研究への障害、奨学金という名の多額の借金、大学改革や厳しい就職難の中での大学院生の心理的負担について明らかにしてきました。今年も次項より掲載するような大学院生の実態を元に、文部科学省や国会議員への要請を行います。
※本報告書は「概要版」です。全院協のウェブサイト(http://zeninkyo.blog.shinobi.jp)に電子媒体でも掲載しております。また、詳細な「報告書」も、2015年11月中旬ごろに掲載いたしますので、そちらも併せて御覧ください。

(1)調査目的

本調査は、大学院生の経済実態を客観的に把握し、もって大学院生の研究及び生活諸条件の向上に資することを目的としている。2004年度から経済実態に関するアンケート調査を行ない、それを報告書としてまとめてきた。今回の調査で12回目となる。

(2)調査状況

1. 2015年6月15日~9月15日に実施した。
2. 調査は紙媒体・Web両方で行い、前回を上回る1051人からの回答を得た(2014年度は1000人)。大学数も過去最高の、118国公私立大学だった(2014年度は82校)。

(3)基礎的データ

1. 男女比は男性58.4%、女性40.5%、その他0.3%、回答の意思なし0.9%である。
2. 年齢構成は、20~24歳が40.7%、25~29歳が36.1%、30~34歳が11.6%と続いた
3. 学年は、修士課程1年(M1)、修士課程2年(M2)がそれぞれ29.2%と20.4%、博士課程1年(D1)、博士課程2年(D2)、そして博士課程3年(D3)が、それぞれ11.5%、11.4%、そして14.0%だった。
4. 設置形態については、国立大学法人が73.2%、公立大学が5.2%、私立大学が21.3%と、国立大学法人に在籍する大学院生からの回答が特に多かった。
5. 学系については、人文社会系、社会科学系、そして理・工・農学系がそれぞれ、31.0%、36.9%、そして22.5%だった。例年ほどではないが、自然科学系よりも人文社会科学系からの回答が多かった。
6. 留学生は12.1%、社会人院生は16.1%だった。

1. 多くの大学院生がアルバイトに追われ、研究に支障を感じている

■大学院生の3人に1人が、週10時間以上のアルバイトに追われている

 大学院生の経済的実態を端的に表しているのが、アルバイトの実態である。高い学費と乏しい奨学金の中、多くの大学院生がアルバイトに従事し、生活費や研究費、学費をまかなっている。
大学院生全体の69.0%が何らかのアルバイトに従事していた(RA 、非常勤講師を含む。図1)。たとえRA、非常勤講師を除いても、アルバイトに従事する大学院生の割合は60.5% と非常に高く、3人に2人の大学院生がアルバイトをしていることが明らかになった。
 また、一週間あたりの、従事しているアルバイトの時間を図2に示す。アルバイトに従事する大学院生の51.7%が、週に10時間以上働いていると回答した。実に、大学院生の3人に1人が週10時間以上のアルバイトを行っている計算である。
 
図1. なんらかのアルバイトに従事する大学院生の割合(RA、非常勤講師を含む)N=1048

 
図2. アルバイト(RA,非常勤講師を含む)従事者の、週あたりのアルバイト時間N=731

■大学院生の4人に1人が、アルバイトが原因で研究時間を確保できていない

 アルバイトの負担は、大学院生が研究を進める上での大きな障害となっている。
 「研究時間は充分に確保できていますか、もし確保できていない場合、その要因を教えて下さい。」という質問に対して、「研究時間は十分に確保できている」という回答は41.3%にとどまった。図3に示す通り、アルバイトによって研究時間が確保できていないという回答が多く、大学院生全体の27.5%に上った。大学院生の4人に1人以上が、アルバイトによって研究時間を確保できていないと感じているのである。
 自由記述からも、「生活費や学費に関しまして、現在奨学金とRA、アルバイトによりすべてまかなっております。アルバイトは日曜日にのみ行っています。研究は月曜から土曜日の午前9時から夜中の12時まで行っているため、全く休みのない生活が数年間続いております。精神的にも肉体的にも困難な状態が続いております。」(D1、男性、私立大学)といった声が寄せられた。
 
図3. 研究時間を充分に確保できていない理由N=1041(複数回答可)


■大学院生は授業料や生活費のために、やむを得ずアルバイトに従事する

 アルバイトについては、大学院生が大学での研究を継続するためにやむなく従事している場合が多い。一例として、学外のアルバイトの目的を図4に示す。91.5%が、「生活費・学費・研究費をまかなうため」と回答しているのである。
 また、収入の不足や学費の負担が研究に与える影響について、図5に示す。「影響はない」は34.3%であり、65.7%は何らかの影響を受けていると回答した。具体的な内容としては、「アルバイト・TA をしなくてはならない」が40.1%、「研究の資料・書籍を購入できない」が36.9%と続く。「授業料が払えない・滞納したことがある」という回答も8.4%あった。多くの大学院生が、授業料や研究費を支払えないということと、アルバイトによって研究時間を割かれるということのトレードオフに直面している。
 
図4. 学外アルバイトに従事する大学院生の、アルバイトの目的N=434(複数回答可)
 
図5. 収入の不足や学費の負担が研究に与える影響N=1042(複数回答可)

2. 学費負担は重く、大学院生は奨学金の借金を背負っている

■授業料減免は未だに乏しく、大学院生は多額の授業料を支払っている

 日本は先進諸国の中でも学費負担が極めて重い。設置形態別の負担している学費の額を、図6に示す。国公立大学共に「60万円未満」が最も多く、これは国立大学授業料標準額が535,800円であることを鑑みると妥当である。私立大学において学費の重さは特に顕著であり、半数近くの46.6%が、年60万円以上の学費を支払っている。
 
図6. 設置形態別の負担している学費(年額)N=1044

■大学院生の半数が奨学金を借入し、その4人に1人が500万円以上の借金

 今、半数以上の大学院生が学生支援機構の奨学金を利用している。しかしその全てが貸与型、それも多くが有利子のローンである。
 今回の調査では、65.0%が(給付型・貸与型問わず)奨学金の利用経験があり、50.2%が「貸与型奨学金を利用している・利用したことがあり、今後奨学金の返済がある」と回答していた(以下、奨学金借入者と記す)。奨学金借入者の借入総額を、図7に示す。半数近くの49.5%が300万円以上の借入をしていた上、4人に1人の25.3%が500万円以上の借入を、10人に1人以上の12.6%が700万円以上の借金をしていた。また、1000万円以上の借入をしている院生も2.6%おり、大学院生の借金の重さが伺える。
 自由記述からも、「仮に奨学金を借りられたとしても、そのために進学を諦める学生は、私の身の回りには少なくない。日本の大学はあまりに学費が高すぎると思う。なぜこんなにも高いのか意味がわからない。どの学問分野でも、金銭的、時間的余裕がなければ充実した研究は不可能なのではないか。あるいは学問そのものを潰そうとするのが行政の態度なのかと感じる。」(M1、男性、私立大学)といった声が上げられている。
 
図7. 奨学金借入者の借入総額N=509

■借金が増えることを避けるために、奨学金を借りずにアルバイトに従事する

 大学院生にとって、借金を背負うことは当然大きな精神的負担を伴う。自由記述において「親は、借金をこれ以上増やしてはいけないと奨学金を借りることを反対してくる。」(M2、女性、国立大学)という声が寄せられるように、奨学金の借入を避けようとする傾向は、大学院生に広く見られている。
 表1に、授業料・研究費・生活費の負担主体を示す。特に研究費、生活費については「アルバイト」の回答数が「奨学金」の回答数を上回っている。これは、多くの大学院生が、たとえアルバイトに研究時間を削られてでも、奨学金の借入を避けていることを示している。貸与型奨学金が、大学院生の経済支援策として根本的に不十分であることを表しているだろう。
表1. 授業料、研究費、生活費の負担主体(複数回答可)

 

1位

2位

3位

4位

授業料(N=1040)

親・親戚の所得

(48.6%)

自らの預貯金

(22.2%)

奨学金

(22.0%)

アルバイト

(17.2%)

研究費(N=1040)

アルバイト

(29.7%)

自らの預貯金

(27.8%)

奨学金

(21.1%)

親・親戚の所得

(19.5%)

生活費(N=1041)

親・親戚の所得

(47.0%)

アルバイト

(38.1%)

自らの預貯金

(30.3%)

奨学金

(25.7%)


3. 大学院生の精神的負担は極めて重い

■学年が進むごとに借金が重なり、多くの大学院生が返済に不安を抱いている

 以上までで示したような奨学金という名の重い借金は、大学院生に大きな不安感をもたらしている。図8に表れているように、奨学金借入経験者の84.6%が、返済への不安について「かなりある」または「多少ある」と回答した。これは、過去のアンケートと比較して最も大きい数値である(2012年:81.70%、2013年:80.4%、2014年:74.7%)。また、修士課程・博士課程・それ以上と進むにつれ、不安が増大している様子も読み取れる。
 また、図9に表れているように、借入額が大きくなるほど返済への不安もまた大きくなる。700万円以上の借入をしている大学院生の、93.7%が返済に不安を感じている。大学院生が、社会に出る前に大きな借金を背負うことの、心理的負担の重さを示しているだろう。
 
図8. 奨学金借入経験者の、奨学金返済への不安(課程別)N=514
 
図9. 奨学金借入経験者の、奨学金返済への不安(借入額別)N=508

■研究の見通しだけでなく、経済的問題、就職難に不安を抱いている

 大学院生活での研究・生活上の懸念について、図10に示す。「研究の見通し」(65.7%)につづいて、「生活費・研究費の工面」(63.4%)、「就職状況」(61.7%)となっている。また「授業料の工面」「奨学金の返済」の回答がそれぞれ35.5%と33.1%であったことも鑑みると、経済的困窮が大学院生にとって大きな懸念事項となっていることが示されている。当然奨学金という借金を背負っていることは今後の人生そのものについて不安を感じることもあり、そういった背景からも「人生設計(結婚・出産・育児など)」が50.0%と高くなっている。自由記述からも、奨学金借入額が800万円以上の大学院生から、「貸与額が大きいので将来に不安を感じるから自己破産してしまいたい。日々、現状と将来を悲観し自殺を考えている。」(D2、女性、国立大学)といった声が寄せられた。
 
図10. 大学院生活の懸念N=1025(複数回答可)


■大学改革の中での競争主義・業績主義を、大学院生も実感している

 「成果主義・業績主義的などからくる、自身の将来に対する精神的負担 ・不安を感じていますか。」という質問に対する、課程別の回答を図11に示す。
 「強く感じている」、または「多少感じている」と回答した大学院生は全体で73.6%に上る。そのうち「強く感じている」が37.5%と最も高い比率を占めている。これは過去のアンケートと比較して、明らかに高い値である(2012年度=29.2%、2013年度=30.9%、2014年度=28.8%)。今、文系廃止通知や軍学共同、削減される国立大学運営費交付金など大学改革が叫ばれる中で、大学院生も成果主義・業績主義の流れを実感していることが示唆されている。
 自由記述からも「学振 を代表とする学問における成果主義の風潮は、大学院生のレベルを目に見えるレベルで低下させているように思えます。産官学の連携などと耳触りの良い言葉で学問の領域を踏みにじることへの反省のない風潮には憤りを感じます。(中略)職を得ても、成果主義の風潮のために、研究に専念することは難しいでしょう。その点が最も不安です。」(D1、女性、国立大学)といった、行き過ぎた競争・成果主義を危惧するような声が寄せられた。
 
図11. 成果主義・業績主義を感じているかN=1047


4. その他の要点として、自由記述より寄せられた声

■大学院生にとって、結婚・出産・育児と研究の両立は、困難を極める

 現在直面している問題は、ライフワークバランス。妊娠・出産・育児と研究の両立です。幸せなことである妊娠出産育児を素直に喜べないのはなぜなのか自問している。研究を続けられるのかという自分に対する不安と同時に、周囲からの「もう研究しない人」という視線の恐怖、潜在的なハラスメントがあることを実感した。出産は博論が書けてから、あるいは就職が決まってからが良いという風潮の根強さを感じます。仮に無事に出産できても、大学院生の子供は保育園に入りにくいため、大学に保育施設があればよいのだが、所属大学にはない。周囲の育児への助けがなければ研究はできない。親の助けを得られない人もいる。制度(学振の産休育休制度やRPD)を利用しない理由もないが、その枠の狭さからもわかるように根本的解決にはなっていない。育児か研究かのような二者択一を迫るような(大学)社会ではなく、院生の多様性を認める(大学)社会になってほしい。(D3、女性、国立大学)

 学費に関しては、兄弟が多く、うち3人が自宅外大学生なので親への負担が大きく、進学を許してもらっているとはいえ非常に心苦しい。今年から母はパートを朝~昼と、夕~夜でかけもっているが、それは収入証明書にはでない要素で、さらに収入が極端に少ないというわけではないので、なかなか免除は通りにくく、金額以外の要素も少しでも多く加味できるような構造になることを望む。
 また、経済的な見通しの悪さや親への負担以外に、博士課程に進学する際、留学などして研究に本腰をいれたい時期(20代後半)と出産適齢期が被っていることも進学するか悩ましい理由のひとつである。結婚はいつでもできるが、出産は適齢期があると個人的に思う。個人的には子を産み育てることも昔から考えていた自己実現の道のひとつなので、こちらを選ぶことに現時点ではなりそうだ。女性研究者にとってこればかりは仕方ないのかもしれない。(M1、女性、国立大学)

 国立大学の改革が学生、教職員不在で、当局の委員会で決められており、トップダウン式に変更が降ろされ、大学に振り回され、研究に集中できない。来年で支援機構の奨学金が終了するので、学費が払えるか不安。学費が高い。アルバイトと研究を両立するなら年間10万位でないと無理。また、経済的困窮している場合の無料化の枠を拡大してもらいたい。(研究が忙しく、結婚や子育てが考えられない。)(D3、男性、国立大学)

■人文社会学系について、将来や研究への不安感は大きい

 現在、妊娠中のため体調が思うように安定せず、研究が全くはかどっておらず焦りを感じる。学振があるため、経済的な不安は期間限定ではあるものの解消されているが、今後研究を継続していくうえで、どのように育児と研究を両立していくのか不安が常にある。私の所属する大学では、学生への育児支援が全くなされておらず、具体的に何かしようという姿勢もみえないため、女性研究者支援など口先だけで大学のシステムから否応にも排除されていくように感じる。
 また、学費がやたら高いのが本当に困る。今後さらに値上がり傾向にいくのではないかと心配。一般的な稼ぎのある配偶者がいるために、授業料免除もなかなか認められず、それが本当に解せない。私の研究費や授業料は、配偶者の稼ぎとは全く無関係であり、別会計なのに。今後子供の養育費などにもお金が必要になるなか、今後も大学院を卒業するまで数十万単位で授業料を払わなくてはいけないと思うと、心配になる。人文系の軽視が進行するなか、今後就職先もさらに先細りするのではないかと思うと、正直将来の展望は明るくない。大学院生を取り巻く状況は本当に厳しく憂鬱になるが、全院協のこういった活動はだからこそ価値があると思う。
(D3、女性、国立大学)

 院生間の経済格差を最近特に強く感じています。とりわけ就職の厳しい人文社会科学系分野の場合、そもそも経済的に余裕のない人間が進学を選択できない状況が強まっているように思います。競争的資金の獲得、資金の重点配分を掲げる現在の大学の戦略が、そうした経済的な余裕のない院生の根本的なフォローになるとは全く思えません。今の大学は大学院で学ぶ権利を全く保障できていないと思います。(OD、男性、国立大学)

 海外の国立大学に比べ、日本の国立大学法人の授業料の値段の高さに疑問を感じています。授業料、研究費用、生活費を確保するために修士・博士課程をつうじて学生支援機構から約500万円を借り入れましたが、文科省の推進する人文系学部の縮小・削減方針は将来の教員雇用削減に直結するものであり、自分の研究領域では定職に就くことが困難になるのでは、という不安を感じています。したがって、借入金の返済も支障が生じるであろうことを予想しています。
(D3、女性、国立大学)

■研究室での雑務が多く、研究時間が割かれてしまう

 研究、生活上の両方に問題がある。生活上はやはり金銭面。課程博士をとるため、今年で博士後期課程3年の2年目。正式な博士課程(3年間)が過ぎれば、奨学金がもらえないので、金銭面はとたんに苦しくなった。なお、休学中であるため、TAなど学内アルバイトは一切できない。また、非常勤については、本学は学内からは一切とらない宣言をしているため、無理である。本学はどんなに優秀であっても学内からの採用(非常勤を含める)はしない、と宣言している。
 奨学金がもらえなくなった年から、生活を切り詰め、研究書籍はほぼ購入できなくなった。学外アルバイトをとも考えるが、そんな時間はとれないし、アルバイトを始めた時点で指導教員から指導してもらえない可能性が高いため、その選択肢は考えてない。
 3年間で博士論文を提出できればいいのだろうが、文系ではほぼ無理である。私の先輩も未提出のまま、研究室を去った。また知り合いの院生は、先が見えないことと金銭面から、博士論文提出について数年悩んだ末に、ついに諦めてしまった。来年度から一般企業に就職するとのこと。彼がもつ技術は有益であるが故に、本当にもったいないと思っているが、同時に先が見えないのは私も同じであり、説得するのも気が引けるのが事実である。実際、私自身も同じように、研究職を目指していたことそのものをいっそ忘れてしまい、一般企業に就職した方がいいのではと思うことが多々ある。
 研究面でいえば、大学に通うも研究できる時間が全くとれない。これは所属する大学や研究室レベルによると思う。私の研究室では、院生に自由はない。特に最年長にはない。大学ですることといえば、基本、“雑務”である。学部生の生活面までをも含む指導。コミュニケーションが苦手な学生がいれば、その子が話すまで忍耐強くコミュニケーションをとるなど。また、研究室イベントの実施や教員の講演のコーディネイト、学会やフィールドワークに伴う旅券・宿泊の予約。その他。これらの“雑務”ばかりであり、研究に関する論文1本も読める時間は与えてもらえない。勉強は家でやれ、とのこと。修士課程ではそれを実践できていた。そのため、毎日の睡眠時間は3~4時間だった。上記、雑務は全て無償である。金銭は一銭も発生していない。
 大学へは、朝から日をまたぐ時間まで滞在している。大学から帰る時間は1時、2時は当たり前。休日は病気でもしなければない。勝手に休めばいいと思われるだろうが、研究室として活動している以上、一人が勝手に休むわけにもいかないし、最年長となればなおさらである。そのため、家と研究室との往復で、友人と会うのですら全て断っている。ここまでして大学にいるにも関わらず、研究が進まないのは、“雑務”が大きく占めているからである。これから逃れるには、研究室そのものを変更するか、別の場所へ移動するしかない。そうなれば、博士論文提出も先延ばしになるため、それはなかなか困難である。(後略)(D3、女性、私立大学)
 

■現在の高等教育政策そのものに問題意識を持つ大学院生も存在する

 教育、研究という人材が命の就職において教育、研究に専念できる状況ではもはやなく、年々環境が悪化していく現状、改革に強い憤りを感じる。極めて一部の研究分野に集中投資をすることは、一見効率がよいように考えられがちだが、すそ野の広がりのない、短期的な視野での投資は長期的には日本の研究水準の死滅を意味する。どうあがいても資源がない日本においては、豊かな人材こそが生命線なのではないか。(OD、男性、国立大学)

 現在博士課程に在籍しているが、競争が激しいことに不満はない。しかし、過半数のものが多くの奨学金の借金を背負ったまま競争を強いられ、人生を奪われる構造はあまりに不平等である。政府はアカデミックの強化と世の中の発展のために博士課程人材を増員してきたが、結果一方的に院生に多くのしわ寄せが来ていることは言うまでもない。政府に責任がないとは決して言わせない。実際私も奨学金を700万円借りて博士課程に進んだが、日々いくら努力したところで将来に対する不安、精神的苦痛は消えることなく存在し続けている。(D1、男性、国立大学)

 課題はたくさんあると思いますが、人材育成に関して、大きく2つのことに危機感を募らせています。一つ目は、大学の教員(研究者)が多忙で研究および教育に時間をとれていないことです。研究者が研究できないことはそれだけで損失でありますが、さらに、学生にとって、指導もあまり受けられない上に、研究者が研究する背中を見られないというのは、モチベーションの低下を加速させます。また、大学に残っても研究する時間がない現状を見ているために、アカデミックを希望しない知り合いも多くいます。この現状は、日本の発展にとって多大な損失を招くものだと思います。
 もうひとつは、大学院生の経済負担が大きいことです。私自身、大学院に進学するために学部生のときにアルバイトをたくさんしていました。その甲斐もあって、さらには奨学金を借りることで、大学院では研究をメインにすることができましたが、学部の勉強時間はアルバイトの分だけ少ないですし、奨学金の返済額はかなり大きくなっています。こうしたリスクをとって入る大学院でありながら、学生の受け入れ環境が整っていないところが多いというのが現状だと思います。そのような中で、さらに大学院や博士課程進学者を増やそうとしているのは、数だけにこだわっているように感じられ、理解に苦しみます。諸外国に比べて博士号取得者が少ない状況を改善する方向に進むには、圧倒的に財源やスタッフが不足していると思います。貸与奨学金も、ありがたい制度ではありますが、実質上は借金と変わりません。とくに大学院では、学ぶだけでなくアウトプットをしているのですから、給付型の奨学金を増やすことが必要だと思います。(D3、女性、国立大学)

おわりに

 本資料ではここまで、大学院生の経済的困窮、研究や将来に対する不安を明らかにしてきました。本アンケートの自由記述では、そういった苦境や不満を訴えると共に、国として次世代の研究者育成をおざなりにすることへの問題意識が語られました。本資料を締めくくるにあたり、自らの経済環境・研究環境についての大学院生の問題意識の声を取り出します。
 「田舎なら家一軒建つほどに「奨学金」という名の借金を重ね、さらに人生設計など立てられなくても、それでも自分がやりたいと思う研究をやろうと必死になってはみるが、将来には希望を見出せない??こうした研究者育成の劣悪な状況をこの国のお偉方は本気で慮っているとはどうも思えない(そもそもこんなことに興味がないのだろう)。」
 「大学院生を取りまく周辺環境は良いとは決して言えない。それを知っているからこそ、大学院生はあまり己の状況について発言しないし、できないと考える。発信すれば、直接それが何かしら研究に響くからだ。しかし、発信できずにいればいつかは壊れる。壊れる前に脱出するのが、一般職を選択したかつての大学院生であろう。」
 全院協は12月4日に、以下の項目について文部科学省や財務省、国会議員への要請を行います。よりよい経済環境・研究環境のもとで大学院生が研究を行うことが出来るよう、アンケートで集まった大学院生の声や実態を、しっかりと伝えていきます。

■2015年国会要請項目

1. 国際人権規約A規約第13条2項(C)にもとづく高等教育の漸進的無償化
2. 研究生活の基盤となる経済的支援の抜本的拡充
3. 大学院生および博士課程修了者の就職状況の改善
4. 国立大学運営費交付金、私学助成の拡充
5. 若手研究者の育児支援の充実
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